(2023年10月20日投稿)
この『それは丘の上から始まった』の本に、本を紹介する帯がついていました。帯には紹介文がびっしり書かれています。書いたのはラッパー兼ラジオパーソナリティのライムスター宇多丸という人です。
一部をご紹介します。
「とにかく丹念に慎重に史料を収集、分析し「物語」ではなく事実に迫ろうとしてゆく著者の姿勢は歴史に向き合う者のスタンスとして圧倒的に正しい」
この文言は、今、遺品整理をして何かの手段で発表披露をしている中の人にとっては、必ず「心に留めるべき」問題だと思います。いや、「心に留めるべき」では言葉が弱いかもしれません。「肝に銘ずる」くらいの強い意志が必要です。
いろいろと調べていると「AがBだったら面白いのに」という誘惑に駆られることがあります。しかし「AがBだった」という推測は立っても証拠はない。つまり本当に「Bだった」と断言出来ない部分というものがあります。そこをぼやかせて「AがBだった」と言ってしまうとそれは「物語」になってしまいます。もちろん「推測が確証に変わる」ことはありますが、それにはきちんと史料の収集、分析が必要です。
中の人としては「ここはそういう史料があった」「ここは中の人の妄想」と混ぜないで分けているつもりですが、油断をすると「妄想」が先走ってしまいます。
ライムスター宇多丸さんの文章を読んで改めて気を引き締めました。
この『それは丘の上から始まった』の本は、中の人の夫が、ラジオでライムスター宇多丸さんが紹介をしていたのを聞いて、「この本は役に立つよね」と中の人に教えてくれました。
夫曰く「ライムスター宇多丸さんって何であんなに物知りなんだろう?ラジオパーソナリティはあのくらい博識でないと話題が保たないのかなあ?」とも言っていました。
(という夫も「なんでそんなこと知ってるの?」ということ多いんですがね)
そして丹念に、慎重に、誠実に史料に向き合い、事実を探ろうとしている著者、後藤周様の姿勢に背筋が伸びる思いです。
長年この問題の調査研究をされている、元社会科教師の著者と違い、歴史好きとはいえ、畑違いでもあり、ただの音楽教室講師の中の人はまだまだ「ひよっ子」ですが、こういう先達の姿勢を見て「ヘッポコだけど頑張ろう」と思いました。
いろいろと引用をしながら『それは丘の上から始まった』と『田中三郎の日記』を照らし合わせてみました。
一つはっきりと解ったことは、1923年9月、関東大震災時の横浜が大変な状況であったこと。その大変な状況下に田中三郎さん、そして次兄の田中規矩士先生たちがいたということ。この『それは丘の上から始まった』の本はそれを教えてくれました。(終わり)