田中三郎の日記

大正12年から13年の日記。横浜における関東大震災そして東京移住・東京音楽学校・大正時代の市井の人々の生活。

月島第二小学校

21.大正12年10月28日から10月31日まで。ピアノ入手!調律の板倉氏が来る

「10月28日(日)曇り 午前中敬一兄、姉と共に大仏方面に散歩す。その時、震災秘密写真3枚(洲崎の死体、被服廠の死体)を50銭で一車夫より買う。右は実に恐ろしき光景にて、記念とすべきに足るものなり。」 残酷というか悲惨な写真をついつい見たくなるのは…

23.大正12年11月1日から11月4日まで。規矩士自宅レッスン再開

「11月1日(木)晴 9時半ごろ父と共に生麦新住宅地国道筋の永楽銀行の仮事務所に行き、規矩士兄の貯金、約280円を払い戻す。母の分は印を焼失の為、約一週間後に支払う由。銀行金の話によれば横浜支店は支店長外4名の事務員全部圧死せりと。それより生麦停留…

24.大正12年11月5日から11月6日。戸籍滅失。

「11月5日(月)晴 夜明け方、強震あり、一同戸外に飛び出る。9時頃より大森の松岡写真館に行き、1組3枚半身像を写す。それより蒲田まで歩き、汽車に乗りて横浜に行く。そして桜木町の市役所仮事務所を訪れ、戸籍謄本を取らんとせしも、戸籍焼失に付き、不可…

25.大正12年11月7日から8日まで。規矩士は聖心女学校のピアノ判定をする。父、敬義は恩給支払いの手続きをする。

「11月7日(水)曇り雨 朝、神中に学業成績書を請求す。午後より父は竹須夫妻と共に、三木邸隣の平林方の菊を見物に行く。帰りに竹須細君一人、家に寄る。そしてピアノを見る。本日敬一兄は月島小学校より雑記帳2冊、ゴム消し3個、鉛筆3本の慰問品を受く。京…

31.大正12年12月1日から7日まで。風呂場完成。敬一兄快癒。

「12月1日(土)晴 午前中規矩士兄は三田に音楽書を買いに行く。竹須氏来たり。掛物を取り換える。本日壁屋来たり。壁の下塗り直す。あいにく父が少し風邪をひいたため、塵埃甚だしいので困る。夜、薬をとりに行き、帰りに竹須方の湯に行く。永らく入らなか…

34.大正12年12月16日から21日まで。たなかすみこから手紙が来た。父、敬義氏がピアノを教える。ベートーヴェントリオ旗揚げ?

「12月16日(日)晴 朝、規矩士兄は、旧2等汽車乗車券再交付に付き、横浜駅出札掛より通知の手紙来たりしより横浜駅に行く。新聞によると火災保険支払いの件は、1割に決定の由、規矩士兄の再交付券は3円の手数料を取られ、来年の2月15日に延期されたりと。規…

35.大正12年12月22日から24日まで。共益商社よりピアノが来る。ベートーヴェントリオの高階氏ドタキャン騒動(-_-)

12月22日(土)雨曇り 朝、山川氏、音楽会の切符(2枚)をとりに来る。副島、露木氏ピアノ稽古をなす。副島氏歳暮に砂糖を下さる。本日は音楽学校の学友会音楽会にて規矩士兄は10時ごろ出校す。 共益商社よりピアノ、椅子来たる。2時頃本牧のおじさん訪れる…

38.大正12年12月29日から12月31日まで。小山先生、共益商社

「12月29日(土)曇り後晴 朝、少し雪が降った。午前中敬一兄は小山先生宅に行く。副島、岡3人、露木氏稽古に来たる。尚又市川千代氏遊びに来たる。氏は竹須さんの側に横浜より引越し来たる由。森永菓子を下さる。昼過ぎ規矩士兄は竹須方に行き、龍之助氏の…

39.大正13年1月1日から1月2日まで。お正月。

100年前の東京でのお正月。100年後のお正月。 国旗を掲揚する家はほとんど見かけなくなりました。(ウチの近所だけでしょうか?) ラジオもテレビもネットもないから、家族一同でお祝いをしたり、近所に年賀に行ったりするお正月。年賀に家を訪問する方もい…

44.大正13年1月15日。関東大震災の最大余震丹沢地震発生!

「1月15日(火)曇り 忍耐は金の成る木 朝、6時少し前、近頃にない激震があった。余は未だ熟睡中であったが、地震と同時に跳ね起き、勝手口の錠をとり、ただちに門を開けて戸外に出た。父もまた、余の後ろに来た。規矩士兄、母は奥の六畳間より庭に出た。敬…

50.大正13年1月21日から1月22日 寒いので病人多し2

1月21日(月)晴 労働は神聖なり 敬一兄は未だ腹が痛まず、足部が冷えるのでカイロを入れる。熱は37度6分。少しある。規矩士兄は月島第二(青山2864)へ電話をかけ、缶欠する旨を伝えしむ。(病欠をするという電話をしたんだと思います)東京音楽学校の電話…

57.大正13年1月26日5、1月27日、1月28日  寒いので病人多し5

1月26日の続きです。 「朝、9時頃起きた。丁度海の方で皇礼砲が轟いていた。品川湾に軍艦が来ているのだ、また10時過ぎにも鳴った。なんとなく遠くの方で花火の音がするので賑やかな感じがした。規矩士兄は武高の式に出席し12時に帰る。亀屋にてジャム食パ…

58.大正13年1月29日から1月30日まで。寒いので病人多し6 体温計壊れる

1月29日(火)曇り 風 11時ごろ起きた。府川氏より頼んであった母の新調の着物、出来て来たる。敬一兄、正午の温度36度2分。規矩士兄は武高日なり。母は洗濯で忙しい。数日湯に入らぬので、身体が痒くなる。午後、竹須龍之助来たる。氏は明朝早く豊橋の二十…

59.大正13年1月29日から1月30日まで。東京音楽学校の同級生川上きよさんのこと 規矩士兄はショルツに師事していた?

1月31日(木)晴 午前中、余は大井通りに婦人画報2月号を買いに行く。規矩士兄の記事は川上きよ氏の評の中に一寸書いてあるのだ。 月島第二小学校より敬一兄の履歴書よこせと手紙来たる。余はそれを書く。父もまた、田舎の北見由蔵氏より、田中の戸籍抄本を…

61.大正13年2月3日から2月5日 規矩士フロックコートをあつらえる。戸籍問題が解決したようです。

「2月3日(日)晴 大風 北風が吹くので、大変寒く、雪がすっかり凍ってしまった。余は8時ごろ起きた。規矩士兄は音楽学校にピアノの練習に行く。昼食に敬一兄は豆腐の汁を飲む。月島第二小学校に診断書を手紙にて出す。父はきな粉を買ってきたり。安倍川を作…

63.大正13年2月8日から2月9日  規矩士兄の演奏会

2月8日(金)暴風 孝行は汝を宝石にす 朝、月島の諸澤、林喜代子、同声会より手紙来たる。南風ですこぶる暖かである。そして大変湿る。 余は明日規矩士兄の履く靴を猛烈に磨く。 3時頃、月島第二小学校の校医、増田章一氏、息子の東京高校入学試験につい…

65. 大正13年2月16日から2月18日 敬一兄出勤!三郎氏の受験校の話とか、ピアノの話とか。

「2月16日(土)晴 風 今朝も5時半ごろ小微震ありたり。甘いかき餅を切る。天気が良いので、飛行機来たる。青山学院高等学部より規則書来たる。外国語学校と試験日が同一なので大いに困る。午前中、副島、露木、市川来たる。午後より西村、朝比奈、伏島、時…

68.大正13年2月24日から2月25日 祖母の祥月命日。火災保険の話題。

2月24日(日)晴 微風 朝2時半ごろ半鐘が盛んに鳴っていた。風があるので心配したが、遠いらしい。貯金局より確認書来たる。午前中西村、岡3人稽古に来たる。また市川氏も来たる。今日もまた一段と寒い。家内に乾かしてあった甘いかき餅が、ほとんど固くなっ…

71. 大正13年2月27日から2月29日まで。三郎氏風邪。井口基成初レッスン。黒澤すみ(たなかすみこ)と井口基成が出会う。

「2月27日(水)晴 曇り午後はまた晴れる 未だなかなか朝夕は寒い。今日より余は財布を新しき品と換える。午前3時ごろ小微震ありたり。父は午後、大井通りの方に買い物に行く。篠田氏夫人、一寸家に寄る。今夜竹須夫人、浜松より帰らる由。なお、本日は花の…

77.大正13年3月12日から3月14日まで。敬一兄も規矩士兄も音楽活動盛んです。

「3月12日(水)晴 曇り夜小雨 朝、余は洋服屋に敬一兄の洋服の催促に行く。それは14日に月島校に学芸会があるので、それに間に合わせる為であるから。父の温度は6時に37度だ。重湯を飲む。青山学院に入学申込書願中の戸籍抄本の代わりに市長の証明書を代用…

80.大正13年3月17日から3月18日まで 大震災善後会から慰問金が来る。ベヒシュタインのあるレッスン室でのレッスン開始。

3月17日(月)晴 風 東京海上保険会社(東京都日本橋区呉服町18番地エンパイヤビルジング3階)に加入する旨の手紙を出す。 (この後、東京音楽学校の入学案内の写しがあります。参考のために写すと書いてあります。) 本日は音楽学校入学予備試験にて、規矩…

82.大正13年3月22日から25日まで。黒澤すみ(のちの妻たなかすみこ)が新しいピアノのお祝いを送る。東京音楽学校の卒業演奏会

3月22日(土)晴 朝は春らしく感じた。西村、魏、朝比奈、副島、時澤(妹)、岡1人、伏島、木村、露木、黒澤、鳥井氏稽古に来たる。木村氏は花を下さる。佐藤喜久雄氏、朝、訪問さる。大学入学せる由。夕方、父、規矩士兄散歩。 3月23日(日)晴 夕方雨 規矩…

85.大正13年4月4日から4月6日まで。三郎氏予備校に通いだす。

三郎さんは「サクラチル」だったようです。残念.....。 「4月4日(金)曇り 今日は正則に行き、午後高等受験科に入る。月謝は3円で束脩1円取らる。また、他の研数学館、日土講習会、国民英学会の規則書をもらいに行く。正則の教科書を買う。The sketch-book,…

93.大正13年5月4日から5月6日まで。特種回数券。共益商社よりグランドピアノの椅子が来る。久しぶりに横浜へ。

5月4日(日)曇り 朝早く、余は洋服屋に夏服地をもって来るように頼む。洋服屋、来たる。敬一兄は月島校同窓会につき、出席す。午前中、竹須、後藤方におかしわ(柏餅だと思います)をあげる。規矩士兄はピアノ練習す。午後、父、規矩士兄、散歩に出る。夕方…

97.大正13年5月25日から5月27日まで。武高の一木校長の慰労会開催。気候が良いので銀ブラ。コスモスを植えた。月桂樹が芽を吹いた。海軍軍楽隊演奏会。

5月25日(日)晴 朝、洋服屋、敬一兄の仮縫いを持って来たる。その際、ピアノカバーを頼む。規矩士兄は上野の歯医者に行く。11時半ごろ、吉川重信君、来訪さる。氏は金沢に徴兵検査を受けに行ったと、第一乙種の由。昼食を馳走す。ちょうど昼頃、小微震あり…

100.大正13年6月5日。東京市主催東宮殿下御成婚祝賀会の見物に行く

6月5日(木)曇り夜時々小雨 本日は東京市主催の東宮殿下御成婚祝賀会である。余は朝7時半ごろから東京に出ていく。東京駅を降りるともはや花火の音が聞こえる。駅前は見物に行く人々で列をなしている。その中を女学生等が花かごを持ち、造花を売り歩いてい…

105.大正13年6月23日から6月27日 敬一兄と父母は花月園に遊びに行く。井戸の水が良くない。規矩士兄体調を崩す。

6月23日(月) 朝、7時半ごろ、小微震あり。竹須さんよりキャベツ巻を下さる。夜、父母買い物に出る。夕方洋服屋のかみさんチョッキの見本を持って来たる。 6月24日(火)晴 朝、三時半に小微震あり。本日で正則は第一学期終わりとなる。余は夏期講習会(国…

110.大正13年7月18日から7月21日。中谷氏が調律に来る。

7月18日(金)晴 午後、中谷氏(調律師)ピアノ調律に来たる。親子丼、サイダーを馳走す。夜、洋服屋、敬一兄の上着(カシミヤ)の仮縫いを持って来たる。湯に入る。隣の後藤氏の息子、安全組合の報告書を持って来たる。湯に入る。隣の後藤氏の息子、安全組…

111.大正13年7月22日から7月27日。三郎氏がよく散歩に出かける大佛って?

7月22日(火)晴 朝、規矩士兄と散歩。父は土肥博士宅に出る。余は規矩士兄の使いで大森郵便局に為替(60円)の支払いを受けに行ったが、委任状がないので不可。午前中、井口氏稽古に来たる。夕方、余は大佛に散歩。規矩士兄、敬一兄も散歩に出る。教育音楽…

116.大正13年8月16日から20日 どこかの大学の編入試験受験を考える。

8月16日(土)曇り 水が出ないので困る。敬一兄は本日月島校より帰る。これで夏の宿直は終わる。午前10時、父、敬一兄の代理で大井町役場に御下賜金(12円)を受領に出る。これは横浜市役所より役場に廻送されたもの。始めて御下賜金を受けた。父のは未だ来…