田中三郎の日記

大正12年から13年の日記。横浜における関東大震災そして東京移住・東京音楽学校・大正時代の市井の人々の生活。

大正13年3月

72. 大正13年3月1日から3月3日まで。規矩士兄はご成婚記念御慶事記念大演奏会に出演する。

「3月1日(土)小雪 風 (震災後半年) 敬一兄は東高日である。余は今日起きた。そしてミルクと食パンの小片にバターをつけて食す。もう熱がない。けれども痰が出る。朝、3時頃、大変汗が出たので、着物を取り換える。セールフレザー社内の内田角蔵氏より…

73.大正13年3月4日から3月6日まで。規矩士兄は武蔵のバーグレートという先生から靴下をもらう。規矩士兄の武蔵高校での給料アップ。田中家では『ああ無情』が流行っているようです。

「3月4日(火)曇りのち晴れ 規矩士兄は高校日(多分武高日)で、朝早く出校す。父は11時頃横浜に行く。余はますます良くなる。敬一兄はいつもより早く4時頃帰宅す。身体が疲れる由。本日午後、簗氏に来たる乳屋の牛乳をとり、2,3日配達せんことを命ず。1…

74.大正13年3月7日から3月8日まで。共益商社とピアノやらオルガンやら

3月7日(金)晴強風 また寒くなった。本日は風が甚だ強いが飛行機1台高く飛んで横浜方面の方に向かっていった。新しく出来た酒屋にて亀甲万をとる。景品に手ぬぐいとたわしをくれる。奥井英十郎氏より手紙来たる。北品川より横浜の旧明治屋本店内に引っ越し…

75.大正13年3月9日 田中家御用達の「守妙」って?共益商社の話。規矩士兄はピアノを買う決心をする。

3月9日(日)晴 曇り 3月に入ってから、かえって寒くなった。朝は裏の田んぼに霜柱が立っている。午前中、露木、木村氏稽古に来たる。余は朝、瀧王子の洋服屋を呼びに行く。敬一兄は床屋に行く。その留守中に洋服屋、敬一兄の仮縫いを持って来たる。いないの…

76.大正13年3月10日から3月11日まで。床補強をする。武高では唱歌の試験があった。

「3月10日(月)曇り風のち晴 規矩士兄は本日もまた音楽学校の試験により朝早くから出校す。分教場の方も本日試験の由。朝、珍しく大工、職人を一人連れて来たる。早速グランドピアノを設置するに付き床下を修繕してもらう。また敬一兄は大工に本箱を頼む。…

77.大正13年3月12日から3月14日まで。敬一兄も規矩士兄も音楽活動盛んです。

「3月12日(水)晴 曇り夜小雨 朝、余は洋服屋に敬一兄の洋服の催促に行く。それは14日に月島校に学芸会があるので、それに間に合わせる為であるから。父の温度は6時に37度だ。重湯を飲む。青山学院に入学申込書願中の戸籍抄本の代わりに市長の証明書を代用…

78.大正13年3月15日 この当時の稽古日って?

3月15日(土)晴 朝、吉川君、本を(受験と学生10月号、幾何教科書)返しに来たる。余と2人にて池上本門寺に行く。本門寺境内にてしばらく休む。絶えず参詣者がある。それより蒲田に出ず。海の方面に軽気球が飛んでいた。風はすこぶる冷たいが、山の背は風が…

79.大正13年3月16日 新しいピアノはベヒシュタインのグランドピアノ(驚愕!)

3月16日(日)晴 朝、伏島氏稽古に来たる。山王の電気屋に電球を取り換えにもらいに行く。 正午共益商社よりベヒシュタイン(2500円)グランドピアノ着く。人夫4人来たる。そして西川製のピアノと取り換える。 大工の設計した位置とグランドピアノの足とが少…

80.大正13年3月17日から3月18日まで 大震災善後会から慰問金が来る。ベヒシュタインのあるレッスン室でのレッスン開始。

3月17日(月)晴 風 東京海上保険会社(東京都日本橋区呉服町18番地エンパイヤビルジング3階)に加入する旨の手紙を出す。 (この後、東京音楽学校の入学案内の写しがあります。参考のために写すと書いてあります。) 本日は音楽学校入学予備試験にて、規矩…

81.大正13年3月18日から22日まで。ピアノに保険をかける。

「3月19日(水)晴 規矩士兄、午前中ピアノ練習す。東京海上の社員が来たが、ピアノの真買の証明書がないため、契約することが出来ず、更に明日来ると約す。今度の震災にて評判良くなったので、鼻息が荒い。規矩士兄は午後、音楽学校にてオーケストラ練習が…

82.大正13年3月22日から25日まで。黒澤すみ(のちの妻たなかすみこ)が新しいピアノのお祝いを送る。東京音楽学校の卒業演奏会

3月22日(土)晴 朝は春らしく感じた。西村、魏、朝比奈、副島、時澤(妹)、岡1人、伏島、木村、露木、黒澤、鳥井氏稽古に来たる。木村氏は花を下さる。佐藤喜久雄氏、朝、訪問さる。大学入学せる由。夕方、父、規矩士兄散歩。 3月23日(日)晴 夕方雨 規矩…

83.大正13年3月26日から29日まで。武高の田村教授の話。豊増昇が東京に戻ってきた。

三郎氏の青山学院の入試が近づいてきました。今度は「日記」という現実逃避をやめにして勉強に励んでいるようです。日記の文章が短い。ガンバレ三郎さん! 「3月26日(水)雨 朝早く、伏島氏稽古に来たる。関鑑子氏の弟、二人にて規矩士兄に演奏会の伴奏を頼…

84.大正13年3月30日から4月3日まで。三郎氏は青山学院の入試に臨みます。今度こそ「サクラサク」でありますように。

3月30日(日)晴のち風 光陰矢の如し 朝、洋服屋、規矩士兄の仮縫いに来たる。規矩士兄、敬一兄は散歩に出る。高崎のピアノ披露会は来月9日という。午後父母は竹須方に行く。母は初めて外出するのである。いよいよ青山学院の試験が明後日となった。吉川君ま…