田中三郎の日記

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148.大正13年12月27日から12月29日まで。敬一兄は忙しい。お歳暮に鴨一羽来る。

12月27日(土)曇りのち一時小雨

午前中、時澤、朝比奈、池田メーブル、市川氏来訪。市川氏は指を負傷せるにより、授業はせず。歳暮としてネクタイ2本をくださる。氏の話によると、鶴見の副島氏は稽古を今後辞める由。池田氏はクリスマスの贈り物として靴下をくださる。午後、岡3人、露木、内藤、黒澤、木村、西宗、浅田氏来訪。岡氏は三越切手10円券、露木氏は奈良漬けをくださる。小樽の兵藤松子氏よりリンゴを小包にて送り来たる。また、昼頃、横浜の高野末子氏、来訪さる。海苔をくださる。なお又、東京(高等学校?)4年生父兄、中西彦太郎氏来たる。靴下、ハリケン石鹸をくださる。

以前に月島校の土谷氏に頼んであった襟巻が本日届く。これは先生が合同して安く求めしもの。

入口と勝手口に松飾りをしてもらう。そして「裏白」を買う。全部で70銭を仕事師に取らる。

本日、餅(白餅のみ)来たる。去年は原の菓子屋に頼んだが、本年は山王の米屋(入新井の横田精米所は不都合の点ありこれを排し、今月より山王の増田屋より米をとる)に搗かせる。夜、虎之助氏、湯をもらいに来たが、あいにく家で湯を沸かしてなかったので、氏は銭湯に行かる。

本日、敬一兄、月島校の宿直なり。講習を終わって月島に向かう。」

 

相変わらずお歳暮のやりとりが続いています。靴下を贈りあっているのがなんとなく不思議な気がします。

そしていよいよお正月飾りも立てて、一気にお正月気分となっています。

 

12月28日(日)晴一時曇り

朝、敬一兄、月島より帰宅。家にて原稿を書き、11時よりまた中野に出張す。夜はまた月島校の宿直なり。非常に忙しい。

午前中、虎之助氏、新聞を見に来たる。余は頭髪を刈ってもらう。規矩士兄、終日年賀状を書く。

西宗氏より三越出の、鴨一羽送り来たる。また、分教場生徒北川氏代理の者、菓子を歳暮に届けてくださる。

本日、白餅を切る。おすわりを床の間に飾る。夕方規矩士兄、散歩に出る。父、今日は時候が暖かいので起きる。急に正月の気分がしてきた。羽子板の音が聞こえる。日日新聞の夕刊、本日より正月5日まで休む。」

三郎さん、暖かいですか?いつもの気象庁過去データによると、最高気温は9.4度で10度を下回っています。ただ前日は雨だったようなので、この日はお天気が良く、暖かく感じたのでは?と思います。

気象庁過去データ|1924年12月】

https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=1924&month=12&day=&view=

そして敬一兄はここの所ずっと原稿書きをしています。どうやら何かの本を出版する話があるようです。おそらくこの本ではないか?と思います。

【作曲の入門】(大正14年

dl.ndl.go.jp

 

12月29日(月)晴一時曇り

朝、敬一兄、月島校より帰宅。年賀郵便を書く。本年、敬一兄は年賀状を100枚印刷する。11時より中野に行く。

昨日もらった鴨の毛を余がむしり、牛肉屋に調理を頼む。

分教場生徒畑氏、ネクタイを、同じく武藤氏、伊藤呉服店5円券を小包にてそれぞれ送り来たる。また、鈴木氏、器物一組をくださる。

隣の後藤氏に年内の雑用の礼として、ミカン箱1箱を呈す。時澤方よりしじみをくださる。竹須さんに少し分ける。

本日年賀郵便204枚出す。夜、規矩士兄散歩。

余は少し咽喉が痛い。夜10時頃、普段よりも大きい地震あり。規矩士兄、懐中電灯器(90銭)を買う。」

敬一兄は忙しそうです。月島校の宿直、中野の女子音楽学校の講習会の講師、原稿書き、そして年賀状書きです。

敬一兄の年賀状はこれ。

三郎氏は絵も描いたみたいですが、敬一兄は枚数が多いので絵はなしです。

 

そして生徒の西宗氏がなんと鴨を一羽贈りました。これは生きた鴨?ちょっとよくわからないのですが、とりあえず三郎氏が毛をむしって、肉屋に持っていって残りの解体をお願いしたようです。

中の人の母が言うには

「昔は生きたままの鶏とかをそのまま例えば農家の人とかが「お中元」「お歳暮」その他お使い物に持ってくるのよ。それをそのまま鶏屋とか肉屋に持っていくの。そうすると肉屋さんが解体してすぐ料理出来るように大皿に盛ってくれるのよ。」

 

余談

年末年始を島根県の祖父の家で過ごした時のことです。

祖父の依頼人が「お歳暮」ということで天然の寒ブリを丸々一匹持ってきてくださいました。しかしそれをさばける人が家にいない。ということで、その依頼人(漁師さん)がその場でさばいて大皿に盛ってくれました。その日はブリ刺しです。

日本海の天然の寒ブリ。超絶に美味しかったです。子ども心に感動しました。

田中家の鴨もそういうことですか?なるほど。